ランナー必見のココロエ

初めてマラソンに挑戦する方やまだ初心者の方に向けてマラソンに挑戦するにあたり、
知っておくべきこと・事前にやっておくべきこと等をアドバイス

アドバイザー 上谷 聡子(ウエタニ サトコ)
アドバイザー 上谷 聡子(ウエタニ サトコ)

2009年に神戸学院大学大学院人間文化学研究科博士後期課程(人間文化学)を修了し、
2020年4月から神戸学院大学スポーツサイエンスユニットの准教授。
市民ランナーの指導に10年以上関わりながら、自身も市民ランナーとして各地のマラソン大会に参加。
第1回神戸マラソン優勝(2時間40分45秒)。自己ベストは、2時間33分55秒(2009年・北海道マラソン)。

01.フルを完走してみたい!と思ったあなたへ贈るココロエ 「完走してみたい!」気持ちが一番大切!

アドバイザー 上谷 聡子(ウエタニ サトコ)

フルマラソンを完走するために一番大切なこと。それは、「完走してみたい!」という気持ちです。 「運動神経の有無?」「練習すること?」と思われた方も、いらっしゃると思います。余談ですが、フル完走のために必要なこととして、前者はほとんど関係がありません。ちなみに、私が中学1年生だった時の体育の成績は「2」。これで「運動神経(体育の成績)は気にしなくていいんだ!じゃあ私にできるかも。」と思って下さる方がいれば、嬉しいのですが。

体育の成績は決して良いものではありませんでしたが、「いつかフルマラソンを走ってみたい」という想いは、中学生の頃からずっと心の中に持ち続けていました。

それが冒頭に書いた、「完走してみたい!」という気持ちを持つことの大切さにもつながります。なぜなら、「練習」をコツコツと積み上げることができれば、誰にでもフルマラソンを完走することが可能だからです。そして、その「練習」を続けていくための原動力となってくれるのが、「完走してみたい!」と思った気持ち。だからこそ、そう思った最初の気持ちを大事に持ち続けてほしいのです。

この気持ちを持ったタイミングが、フル完走に向けたスタートライン。歓喜のフィニッシュへ向けて、一緒に走り出しましょう!

02.ランニングシューズとの付き合い方 シューズも靴下も必ず試し履き!

ランニングを始めてまず準備するものが、ランニングシューズだと思います。初めて購入する人にとって、シューズコーナーへ足を踏み入れること自体、ハードルが高いかもしれません。それでも、通販での購入は絶対にしないように。買い換えをする方も、基本的には試し履きが前提。練習を重ねていくことで、足のサイズや形が変わることもあるからです。

では、自分に合うシューズを選ぶにはどうしたらいいか。一番大切なのは、シューズの大きさです。実際の足の長さよりも、1~1.5cm程度大きめのサイズを選ぶようにしましょう。また、メーカーによってもサイズ感が異なるため、「前はこのサイズだったから」は危険。必ず試し履きをして、自分の感覚にぴったり合うかどうかを確認して下さい。

次に、シューズの扱い方について。かかとに踏んだ跡のあるシューズをたまに見かけますが、それはシューズの機能をすべて奪うことになるので、絶対にやめて下さい!かかと部分が、着地時の安定感を高めてくれるからです。かかとはシューズの命。大切に扱いましょう。

そして、靴下との相性を確認することもお忘れなく。シューズの中でのフィット感は、靴下を履いた状況とセットで決まります。「練習は通常タイプ、本番では5本指タイプ」のようにしてしまうと、着用時間が長くなる本番で足指や爪周辺の不調につながることも。できるだけ本番を想定した靴下で、試し履きや練習をするようにして下さいね。

03.「歩かず完走」のためのチェックリスト

03.「歩かず完走」のためのチェックリスト 「歩かず完走」でマラソンが楽しくなる!

「完走」のためのチェックリストではなく、「歩かず完走」のためのチェックリストをご紹介します。「歩かず完走」は、私自身が走る時はもちろん、フルマラソン指導時に大切にしているココロエの一つです(給水や給食・トイレで立ち止まる時は例外)。「歩かず完走」を目標に練習することで、フルマラソンを最後まで楽しむことができるだろうと考えているからです。せっかく走るなら思う存分大会の雰囲気を楽しんでほしいですし、楽しくフィニッシュできれば「また走りたい」と思えるはず。そんな想いから、「歩かず完走」をテーマに設定しています。

4項目すべてに「Yes」と答えられたならば、歩かず完走の土台はできています。
大会1ヵ月前には4項目とも「Yes」と答えられるのがベスト!もちろん、現段階で1つも「Yes」と答えられなかったとしても大丈夫。全体像としてこの4項目を心に描きながら、大会当日へむけて練習に取り組んでいきましょう!

04.マラソン完走へ向けた練習計画 3ステップ練習でフルマラソン完走を目指す!

1stステップ:「30分間走り続けられるようになる」

1stステップ:「30分間走り続けられるようになる」

フルマラソン完走のためには、練習の段階を一つ一つ上がっていく必要があります。そこで、最初のステップとして目標にして欲しいのが、「30分間走り続けられるようになる」こと。どんなにゆっくりとしたペースでも構いません。重要なのは、30分間走れそうなペースで走り出すこと、です。そして、練習した効果を消失させないためにも、週2~3回は走りましょう。最初は筋肉痛にもなると思いますが、続けていくことで、「あれ?なんだか慣れてきたかも」という瞬間が必ずやってきます。最初のしんどさを乗り越えられたら、完走へ向けて大きく前進したと言えるでしょう。

2ndステップ:「走る時間と回数を増やす」

2ndステップ:「走る時間と回数を増やす」

次のステップは、それまで走っていた時間や回数を増やしていくこと。月間走行距離を増やすことを念頭において、練習を積み上げていきます。また、30分間走り続けられるようになった段階で、次は「1時間走り続けられること」を目指していきましょう。ここまでくると、「持久力がついたかも」と実感できるようになるはずです。

3rdステップ:「歩かず完走のためのチェックリストをクリア」

3rdステップ:「歩かず完走のためのチェックリストをクリア」

最後は、「歩かず完走のためのチェックリスト」4項目がすべて達成できることを目標にします。1週間に1回は10kmを走れていると理想的。さらに、大会1ヶ月前くらいから2週間前までを目安に、20~30kmを一度に走る練習を1~2回、取り入れましょう。それが、歩かず完走にとても大事な練習です。

05.ランニングダイアリーで「走行貯金」を積み立てる 「走行貯金」をためて完走しよう!

「走行貯金」って?

「先月、何キロ走りましたか?」これが、ランナー同士で交わされることが多い会話のひとつです。このように、1ヶ月間に走った距離のことを月間走行距離と言いますが、私は「走行貯金」という言葉を使っています。 お金は使ったらなくなってしまうけれど、自らが運動やスポーツを実施して得られたものは、他の誰かに盗られてしまうことも消失してしまうこともない。コツコツと走ることで積み上げた走行貯金は、決してなくならない自分だけの人生の財産になる、という意味も込めて、「走行貯金」と表現しています。

ランニングダイアリー

上谷 聡子さんの「ランニングダイアリー」

おススメしたいのがランニングダイアリーをつけること。 走った距離や練習内容に加えて、体重や体脂肪率・体調・感想などを記しています。私は写真のように手帳を活用していますが、これが走行貯金を積み上げる「通帳」としての役割だけでなく、本番前の不安な気持ちを和らげる「お守り」代わりにもなってくれます。捉え方によっては、幾通りの使い方もあるランニングダイアリー。ランナーとして一歩を踏み出した方、これまでランニングダイアリーをつけていなかった方は、これをきっかけにぜひ書き始めてみて下さいね。

06.大会へ向けた練習:長距離走「前編」 長距離走が走れたら自信がつく!

長距離走が走れたら自信がつく!

本番を前に、必ず実施しておいてほしい練習があります。それが、大会1ヶ月前くらいから2週間前までのタイミングで、20~30kmを一度に走る練習を1~2回程度実施する「長距離走」です。これを行うことで、長時間走り続けることに対して、身体がその状況に適応してくれます。また、大会本番のシミュレーションとしても有効。最近は、大会だけではなくイベントとして長距離を走る企画を実施しているところもあるので、インターネットで一度調べてみてはどうでしょうか。

ここで、初めて長距離走をされる方にアドバイスを。長距離走で20kmを走った人から「この倍の距離を走るのに、こんなに足が痛くてしんどいなんて…」という言葉を聞くことがよくあります。
でも、安心して下さい。その後に、こんな言葉も聞いています。「実際に大会で20kmまできた時に、長距離走をした時のようなしんどさはなかったです!」と。大会前に長距離走を実施したことが、本番でこういった感想をもてる状況に身体が適応したと言えます。長距離走を実施できた事実を、歩かず完走達成のためのお守り(自信)にして下さいね。

07.大会へ向けた練習:長距離走「後編」2つのポイントを押さえて練習しよう!

ポイント1:レース本番と同じ時間帯に走る

長距離走を実施する際に、試しておいてほしいことが2つあります。1つ目は、大会本番と同じ時間帯に走ること。市民ランナーが普段練習する時間帯として多いのが、早朝や夜の時間帯ではないでしょうか。そのような太陽の光を浴びて走った経験の少ない人が初めて昼間に走ると、想定していなかった疲労感や発汗を突然体験することになります。そんなリスクを少しでも減らすためにも、実施する時間帯は本番に合わせましょう。

ポイント2:走りながら給水・給食する

2つ目は、走りながら給水・給食をしてみること。もちろん、飲んだり食べたりするときは、立ち止まって下さい。テレビで見るマラソン大会のように、本当に走りながら飲み食べすることは、大半のランナーには必要ありません。では、何を試すのか。それは、飲んだり食べたりした後ですぐに走り出す経験をしておくこと、です。その際に心がけて欲しいのが、「ゆっくり少しずつ細かく」してから飲み込むこと。一度にゴクゴクと飲み干したり、あまり噛まずに大きな形のまま飲み込んでしまうことで、横っ腹などの痛くなる確率がとても高くなってしまうからです。

本番で使用する予定のエナジーゼリーをこの時に試しておくと、より安心です。初めてのものを本番で摂って、自分の口に合わなかったら…悲しいですよね。そんなミスマッチを避けるためにも、本番を想定した形で長距離走を実施しましょう!

08.大会本番までのココロエ 大切なのは「いつもどおり」!

大切なのは「いつもどおり」!

大会本番前に意識して欲しいココロエは「いつもどおり」。これには、今までやったことがないことには手を出さないように、という意味が含まれています。本番が近づいてきて様々な不安が押し寄せてくると、筋トレを急に始めてしまったり、初めてのマッサージに行ってしまったり、走る距離や練習の頻度を大会直前になってから急に増やしてしまったり。不安がきっかけでこの時期にやったことは、後で「筋肉痛」や「疲労感」として本番まで残ってしまう可能性が高い。だからこそ、「いつもどおり」に淡々と日々を過ごしていくことが大切になるのです。

「いつもどおり」と体調を崩さないことを心がけつつ、大会までの期間を過ごしていくようにしましょう!